「若者ことば」は存在するか

日本語教育演習室に「若者ことば辞典」という本がある。しかし出版が平成9年のため、ほぼことばのおはかである。

若者ことばについての研究はよく聞く。しかし、若者ことばの当事者でないと、細やかなディテールまでは理解できないのだろうと思う。

例えば、最近では「卍(まんじ)」が私の周りで話題になった。本当にそれだけでは意味がわからないのだけど、たぶん「程度の強いさま」を表す言葉として機能していると思う。

私たちもなんやかんやマンジマンジ言っているけれど、私たちの使っている卍は生きた卍ではない。「なんか高校生が使ってるらしいよくわからん言葉を使ってみました笑」的な揶揄が含まれているからである。これが、CMなどで突然若者ことばが使われるときの「サムさ」の原因だろう。

若者ことばはそれとして世間的に認知されるまでにかなりのタイムラグがある。「若者ことばクイズ」に取り上げられる頃にはもう死んでいたりするので、あのクイズは結構寒い。あと「これ絶対分かんないでしょ笑」という「若者」側の感じが出てしまっているのもちょっとぞくぞくする。

一方で、若者ことばを本気で使っている層はあるのだろうか。もし揶揄りなしで使っているのならば、それは「若者ことば」として認知されないのではないか。「若者ことば」認定された瞬間にそれは本当の意味で若者ことばではないのではないか。